豊胸後の拘縮を防ぐには?原因と知っておくべき重要なポイント
「胸が硬くなってきた」「痛みを感じるようになった」「形が不自然に変わってしまった」など、豊胸手術後の変化に悩まされる方もいらっしゃいます。
これらの症状は、豊胸後の拘縮が原因である可能性があります。
豊胸後の拘縮は、おもにシリコンバッグ豊胸で現れる現象で、挿入したバッグを包む被膜が過剰に収縮することで起こる合併症です。
適切な予防法や早期対応を知っておくことで、バストラインを長期間維持する可能性が高まるでしょう。
本記事では、豊胸後の拘縮について詳しく解説し、予防法や対処法をご紹介します。
九州大学附属病院 頭頸部外科 入局
久留米大学附属病院 形成外科 入局
済生会二日市病院 形成外科部長
リッツ美容外科 副院長
城本クリニック新宿院 院長
城本クリニック新宿院 非常勤勤務
Clean Beauty Clinic 東京院 院長 勤務
※本記事は2025年10月時点の情報をもとにまとめています。
※豊胸手術は保険診療が適用されない自由診療となります。
※記事内の金額は税込です。
※豊胸手術に用いられる機器の中には、国内において医薬品医療機器等法上の承認を受けていないものもあります。未承認の医薬品・医療機器については、「個人輸入において注意すべき医薬品等について」(厚生労働省)をご覧ください。
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豊胸後の拘縮とは何?なぜ起こってしまうの?
豊胸後の拘縮は、体内に挿入されたシリコンバッグを包む被膜が過度に収縮する現象(※)です。
正式には「被膜拘縮」や「カプセル拘縮」と呼ばれており、豊胸手術における主要な合併症の一つとされています。
シリコンバッグという異物に対して、身体が自然に防御反応を起こし、バッグの周りに被膜(カプセル)が作られます。
この被膜が必要以上に厚く硬くなり、バッグを強く圧迫することでさまざまな症状が現れるのです。
※参考:U.S. Food & Drug Administration(FDA) – What to Know About Breast Implants
被膜拘縮の発生メカニズム
豊胸施術後、約3週間から1ヶ月程度でシリコンバッグの周囲に被膜が形成されるといわれています。
通常であれば薄くて柔らかい被膜がバッグを優しく包み、自然に組織に馴染んでいきます。
しかし、何らかの要因により被膜が異常に厚くなったり、収縮したりすることがあります。
被膜が収縮すると、バッグを取り囲むスペースが狭くなり、バストの柔らかさが失われてしまいます。
さらに重症化すると、バッグが押し上げられて胸の形が不自然に変形することもあります。
拘縮の重症度分類
医学的には、被膜拘縮の重症度を国際的な基準となる「Baker氏の基準」によって4段階に分けています。
| グレード | 状態 |
|---|---|
| Grade I | 触診でも正常に近い柔らかさを保っている状態 |
| Grade II | やや硬さを感じるものの、見た目には問題がない状態 |
| Grade III | 硬さが明らかで、見た目にも変形が認められる状態 |
| Grade IV | 強い硬さと疼痛を伴い、明らかな変形が見られる状態 |
※参考:Breast & Plastic Surgery – Capsular Contracture
Grade IIIやIVまで進行した場合は、医療機関での適切な対処が必要になるでしょう。
発生頻度と時期
被膜拘縮の発生頻度に関しては、残念ながら公的な調査は行われていません。
発生時期については個人差がありますが、施術後数ヶ月から1年以内に現れることが多いようです。
中には施術後10年経過してから症状が出る方もいるため、長期的な経過観察が重要です。
豊胸後の拘縮が起こる原因は?どのような要因が関係しているの?
豊胸後の拘縮には、複数の要因が複雑に関係しているといわれています。おもな原因を理解しておくことで、リスクを下げることにつながるでしょう。
施術時の要因
施術中や施術直後の出血は、被膜拘縮の主要な要因の一つです。
血液が組織に残ると炎症反応が強くなり、厚い被膜が形成されやすくなるからです。
また、シリコンバッグ挿入時の細菌感染も重要なリスク要因となっています。
感染が起こると身体の免疫反応が活発化し、被膜が過剰に生成される確率が高くなります。
施術者の技術レベルや使用する器具の清潔さも、これらのリスクに影響を与える要素と考えられます。
体質的な要因
ケロイド体質の方は、被膜拘縮を起こしやすい傾向にあります。
ケロイド体質とは、傷が治る過程で過剰な瘢痕組織が形成される体質のことです。
具体的には、けがや手術の跡に厚い盛り上がった傷跡ができやすい方が該当します。
また、家族にケロイド体質の方がいる場合も注意が必要です。
個人の免疫反応や組織修復能力の違いも、被膜形成に影響を与える可能性があります。
術後のケア不足
適切な術後マッサージを怠ると、被膜拘縮のリスクが高まる場合があります。
被膜がシリコンバッグを覆い固定される前に、定期的にバッグを動かすことが重要です。
また、術後のケア不足によって施術部位の清潔が保たれず、感染リスクを高めることが要因となることもあります。
医師の指示に従わず、無理な運動や重いものを持つなども、合併症のリスクを上げる要因の一つです。
豊胸後の拘縮を見分けるには?どのような症状に注意すべき?
豊胸後の拘縮は、初期の段階で気づくことができれば、適切な対処により進行を抑えられる可能性があります。日頃から自分のバストの状態をチェックし、変化を見逃さないことが大切です。
胸の硬さの変化
わかりやすい初期症状の一つは、胸を触った時の硬さの変化です。
セルフチェックでは、両手で優しくバスト全体を触診し、左右差がないかも確認しましょう。以前と比べて明らかに硬く感じられる場合は、被膜拘縮の可能性があります。
正常な状態では、バストは柔らかく自然な感触を保っているでしょう。
硬さを感じた場合でも、軽度であれば早期対処により改善が期待できるケースもあります。
痛みや違和感
チクチクした痛みや圧迫感、違和感も被膜拘縮が進行しているサインの可能性があります。
これらの症状は、被膜がシリコンバッグを強く締め付け始めているときに感じる場合が多いようです。
軽微な痛みであっても継続して感じる場合は、医師に相談することをおすすめします。
特に、以前にはなかった痛みが新たに現れた場合は注意が必要です。身体が「何か異常が起きている」と知らせる重要な警告として捉えましょう。
形状の変化と左右差
バストの形状が変わったり、左右差が現れたりした場合は、進行した被膜拘縮の可能性があります。
具体的には、胸の片側が高くなったり、お椀型のような不自然な丸い形になったりする場合です。
明らかな変形が見られる場合は、被膜拘縮の重症度を表す「Baker氏の基準」のGrade III以上に進行している可能性があり、速やかな医師への相談が必要です。
鏡の前で正面と横から自分のバストを観察し、変化がないかチェックする習慣をつけましょう。
豊胸後の拘縮を予防するには?どのような対策が有効?
豊胸後の拘縮を完全に予防することは困難とされていますが、適切な対策により発生リスクを下げることは期待できます。施術前の準備から術 後のケアまで、段階的なアプローチが重要です。
信頼できる医師が在籍する医療機関を選択する
重要な予防策の一つは、豊胸施術の経験が豊富な医師が在籍している医療機関を選ぶことです。
信頼できる医師が在籍し、施術実績やアフターフォロー体制が充実している医療機関を選ぶことをおすすめします。
カウンセリングで医師の説明がていねいでリスクについてもしっかり説明してくれるか、設備や衛生管理が行き届いているかも重要なポイントです。
適切な術後マッサージ
術後のマッサージは、被膜拘縮予防において重要な役割を果たすとされています。
被膜が形成される前に定期的にシリコンバッグを動かすことで、柔軟性を保つことが期待できるからです。
マッサージ方法は医師の指導に従い、正しい手順で行いましょう。
| マッサージのタイミング | 頻度の目安 | 注意点 |
|---|---|---|
| 施術後2週間〜1ヶ月 | 1日20回程度 | やり過ぎはシリコンバッグの位置がずれる原因にもなるので注意。医師の指示に厳格に従う |
| 2ヶ月目以降 | 医師の判断による | 定期検診で継続の必要性を確認 |
無理な力を加えず、優しくていねいに行うことが重要です。
薬物療法と物理療法
拘縮予防のためには、線維芽細胞の過剰な働きを抑えることで、過度な被膜形成や瘢痕化を防ぐ内服療法が用いられることがあります。
これにより、ケロイドや肥厚性瘢痕といった「きずあと」の形成を抑制する効果が期待されます。
また近年では、もともと他の疾患(たとえばアレルギー性疾患など)の治療に使われてきた薬の中にも、被膜拘縮の予防に有効である可能性が研究で示唆されているものがあります。
これらは、コラーゲンの過剰な増殖を抑えることで、被膜が厚く硬くなるのを防ぐ作用があると考えられています。
これらの治療法を検討する際は、医師と十分に相談し、適用の可否を判断することが大切です。
※参考:https://pubmed.ncbi.nlm.nih.gov/20601564/
豊胸後の拘縮が発生した場合はどうする?
残念ながら被膜拘縮が発生してしまった場合でも、適切な対処により症状の改善が期待できるとされています。
重症度や個人の希望に応じて、施術の選択肢を検討する必要があります。
被膜拘縮が軽度の場合の対処法
軽度の拘縮で痛みがなく、形状変化も軽微な場合は、経過観察が選択される場合があります。
継続的なマッサージや物理療法により、一定の改善が見込める可能性があるからです。
ただし、自己判断で放置せず、定期的に医師による診断を受けることが重要です。
軽度であっても進行する場合があるため、専門医による画像診断と触診による経過観察が必要です。
症状の変化を記録し、医師と共有することで適切な判断ができるでしょう。
シリコンバッグの入れ替え手術
中等度以上の拘縮では、シリコンバッグの入れ替え手術が検討される場合があります。
この方法では、拘縮を起こしたバッグを取り出し、新しいバッグに交換します。
同時に厚くなった被膜を除去することで、柔らかさの回復が期待できるでしょう。
ただし、入れ替え後も再度拘縮が起こるリスクがあることは理解しておく必要があります。
医師と十分に相談し、メリットとリスクを慎重に検討することが大切です。
シリコンバッグ除去と自己脂肪移植
シリコンバッグを完全に除去し、自己脂肪移植による再建術を選択する方法もあります。
この方法では、ご自身の脂肪を使用するため、より自然な触感を得ることが期待できます。
ただし、脂肪の定着率や、複数回の施術が必要になる場合があることも考慮する必要があります。
あなた自身の体型や希望に応じて、適切な選択肢を医師と相談しましょう。
豊胸後の定期検診はなぜ必要?どのような検査を受けるべき?
豊胸施術後の定期検診は、被膜拘縮をはじめとする合併症の早期発見が期待できます。
適切なタイミングで検診を受けることで、もし問題が生じても早期対処が可能になるでしょう。
定期検診の重要性
シリコンバッグを挿入している場合、自覚症状がないままさまざまな変化が起こることがあります。
特に「サイレント・ラプチャー」と呼ばれる無症状でのバッグ破損は、定期検診でないと発見が難しいとされています。
定期検診は、被膜拘縮の兆候はもちろん、無自覚なシリコンバッグの破損も早期に発見し、適切な対処につながりやすくなります。
医師による専門的な視診・触診に加え、必要に応じて画像診断を行うので早期発見できる可能性があるでしょう。
推奨される検診の頻度と検査内容
一般的には、施術後1年、3年、5年、その後は2〜5年に1回程度の検診が推奨されています。
ただし、個人の状態や医療機関の方針により頻度は異なるでしょう。
検査内容としては、超音波(エコー)検査やMRI検査によりバスト内部の状態を詳しく調べます。
| 検査・評価項目 | 確認内容 |
|---|---|
| 超音波(エコー)検査 | シリコンバッグの状態や被膜の厚さを確認 |
| MRI検査 | より詳細な内部構造を評価 |
| 触診 | 硬さや形状の変化をチェック |
| 視診 | 外見上の変化を確認 |
40歳以上の方には、乳がん検診も合わせて受けることをおすすめします。
一般の健診・検診時の注意点
豊胸施術を受けたクリニック以外で健診・検診を受ける際は、必ず医師に申告しましょう。
一般的な乳がん検診では、豊胸バッグの存在を考慮した適切な検査方法を選択する必要があります。
マンモグラフィ検査では、シリコンバッグに圧力がかからないよう特別な配慮が必要になる場合があります。
検診結果について疑問がある場合は、遠慮なく医師に質問し、説明を求めることが大切です。
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▪️豊胸の料金(1回あたり)
| 施術 | 金額 |
|---|---|
| 脂肪注入豊胸 (100ccあたり) |
275,000円 |
| ヒアルロン酸豊胸 | 440,000~715,000円 |
| シリコンバッグ豊胸 | 1,265,000円 |
※保険適用外の自由診療となります。
※税込価格での記載です。
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豊胸についてよくある質問
豊胸についてよくある質問にお答えします。
豊胸施術後、飛行機搭乗や気圧の変化は影響を受けますか?
豊胸の術後早期は、気圧の変化が影響する可能性があるため、搭乗時期は主治医判断に従うのが無難とされています。
長時間移動は腫れや痛みを強める恐れがあり、休憩と水分補給を計画し無理のない行程に調整するのが無難です。
機内では胸部を圧迫しない衣服を選び、違和感があれば早めに乗務員へ相談することをおすすめします。
サウナや温泉はいつから入っても大丈夫ですか?
創部が乾き腫れが落ち着いた後で、主治医の許可が出てから段階的に再開するのが無難と考えられます。
高温環境は血流を促し出血や腫れを助長するため、のぼせや痛みがあれば中止しましょう。
温泉では創部の清潔保持が課題となるため、浴場の衛生状態や傷がどれくらいふさがっているか状況を確認し、防水のカバー材なども検討してください。
スポーツや筋トレの再開の目安はありますか?
再開時期は、まず医師の許可を得たうえで、軽運動から段階的に戻すのが無難とされます。
胸筋に負荷がかかる動作は違和感や腫れを見ながら、痛みがあれば直ちに中止することが推奨されます。
呼吸が乱れる強度の運動は術後の回復を遅らせる恐れがあるため、睡眠や栄養状態も含めた体調管理を優先し無理なく進めてください。
【脂肪注入豊胸に関する法的記載事項】
治療内容:自分の脂肪を採取して胸に注入し、バストアップや形の改善を行う豊胸術です。
標準的な治療回数:1回
標準的な費用:275,000円(100ccあたり)
標準的な治療期間:数日〜1週間程度(ダウンタイムを含む)
主なリスク:腫れ・内出血・脂肪壊死・脂肪塞栓・左右差・知覚変化
【ヒアルロン酸豊胸に関する法的記載事項】
治療内容:ヒアルロン酸を胸に直接注入して、バストのボリュームや形を整える豊胸術です。
標準的な治療回数:1回
標準的な費用:440,000~715,000円
標準的な治療期間:約1〜3か月程度(ダウンタイムを含みます)
主なリスク:腫れ・内出血・脂肪壊死・脂肪塞栓・左右差・吸引部の凹凸・知覚変化
【シリコンバッグ豊胸に関する法的記載事項】
治療内容:シリコン製のインプラント(バッグ)を胸の中に挿入して、バストのサイズアップや形の改善を行う豊胸術です。
標準的な治療回数:1回
標準的な費用:1,265,000円
標準的な治療期間:約2週間〜3か月程度(ダウンタイムを含みます)
主なリスク:腫れ・内出血・痛み・被膜拘縮・左右差・知覚変化
